早朝広島から草津(1)に着き、草津で別船に移り、まもなく、草津から船をうかべ厳島へ向かう。天気は良い。順調な船足で厳島に着いた。
直に厳島の方に追い風になったので、程なく朝八時頃 厳島へ着く。楽しかったこと、昨夜の不快な馬鹿らしき目にあった(2)ことを吹き飛ばすほど、順調な船足で厳島に着いたことがことのほか面白い。宮島に富籤(とみくじ)(3)があり、年二(二は、にの数字の二で「に」の意)六回行われる。今回は済んでいたが当てた者は追々一定の日に買い求めると見えて、同船客に・さん・よにんおり、富札を見た。
宮島へ上陸して朝飯を食べに宿に入ったら、富籤の当選者の名前が張ってあった。富札一枚が二朱ばかりで買え、同宿者は六, 七枚持っており、一枚当ると、二両・三両・五両・百両余りになるが、その話詳しく聞かせたいが略す。島はこの富籤で成り立っていると云う。(継之助は博打等が嫌いなので)博打染みた経済で成り立っている事が面白くないのである。 今晩は面倒になる故筆を止める。(筆を止める前に宮島の生活・風俗・経済基盤等について追求してから「宮島ハ是ニて立と云し也」と云って欲しかったのであるが。
塵壷―河井継之助日記 【註】につづく
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